ウニ酒の話をして思い出したが、忘れてはならないのが酒器である。徳利もいいものが作られているが、酒飲みにはなんと言ってもぐい呑である。よく愛酒家の間では「備前の徳利に唐津のぐい呑」と言われるように、古唐津のぐい呑には、絵唐津や皮鯨などもあるが、なかでも斑唐津のぐい呑が喜ばれる。
この片口のぐい呑は、もともとは酢注かなにかであったろうと思うが、いつしかぐい呑に格上げされたのだろう。いろいろなぐい呑の中にこういった変わった形のものがあれば興趣を添える。
口あたりのよさ、持ち心地とも申し分無く、ざんぐりとした土味、三日月に削った高台、施釉の際に付いた指跡などに古唐津らしい野趣を感じるが、注ぎやすいように全体を片口の方に傾けたりして、小品ながらなかなか気が利いているのである。この藁灰釉の淡い柔らかな白が、酒をなんとも美味しそうに引き立てるのだから酒が進まないはずはない。ついつい酒が進んで、家内から小言を言われたが、知らない振りをして、このぐい呑を艶やかに育てることにひたすら専念していたことを思い出す。
|