茶会を開く楽しみは、ストーリーを考える楽しみだと思います。花やお道具の一つ一つが主人公。それらを組み立て、一つの物語を亭主がつくりあげる。
昭和63年に、東京不審菴茶会で釜をかけさせていただいたときのこと。時は、師走。寄り付きの庭には、白砂を敷き詰めた雪景色、飛び石代わりの炭俵の蓋。火鉢に真っ赤な炭をおこし、袴の男たちが餅を焼きました。菓子は善哉。この趣向ですか?『忠臣蔵』。討ち入りの夜です。そして、掛け物は「先年無事目出度千秋楽」(即中斎筆 二行)。床に拍子木を置き、「チョン」と一年の終わり。隣には、来る干支の巳。まるで、しりとり遊びをしているようなものです。
間違いのないように、完璧を目指すだけでは窮屈、退屈。発見もありません。
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