お家元では、初釜のための畳の表替えが主な仕事です。畳は、土台となる畳床(たたみどこ)と畳表の茣蓙(ござ)、それに縁(へり)の三つの部分からできていますが、それぞれに専門の職人が作ります。私は、この三つを仕入れて、部屋の寸法に合わせた畳に仕上げることから、付職人(つけしょくにん)と自称しております。
よく、残月亭の畳が堅いという話をお聞きしますが、これも畳床を作る職人の技術のなせる技です。昔は人が藁(わら)を縦横交互に積み、畳の厚さになるまで脚で踏み、木槌で叩き、手で縫い締めましたが、今では機械で作ります。土台となる藁を縦横、交互に70~80センチほどに積む、配(はえ)仕事は人の手で行います。これを機械の厚みのはばに通して、ローラーで圧縮しながら、ミシンをかけます。このとき圧縮した藁が戻ろうとする反動で糸を締めますから、あとからゆがみなどを調整することはできません。配仕事をいかに上手に行うかで、ゆがみのない均等な厚みのしっかりした堅い畳床に仕上がるのです。この畳床に畳表を付けると、畳として仕上がります。四畳半や八畳の部屋は正方形と思われがちですが、対角線を計るとわずかとはいえ長さが違いますから、実際には菱形なのです。そこにきっちりと収まるように畳を細工して仕上げるのが付職人の仕事です。こうした作業を経て、お家元の畳はすっきりとした、堅い畳に仕上がります。
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