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昭和56年、而妙斎宗匠ご襲名の祝賀晩餐会が都ホテルで行われ、私は初めて若女将としてお客様の前に出ました。 晩餐会場のバックヤードで出番を待つ芸妓さんたちのなかで、お家元のご襲名を記念して山本源兵衛さんの酒蔵で新調されたお酒「松の翠」の瓶を渡されて戸惑ったことを覚えています。その時の仲居頭が、「うちの若嫁の店出しどすねん」と紹介していましたが、「店出し」ということばさえ知りませんでした。この年9月末に嫁いできたばかりの私は、お茶屋さんがどのようなことをするのかも教えられておらず、大きなカルチャーショックを受けながら、女将の一歩を踏み出しました。
私たちが守り伝える心配りは、ご縁があって、「ここでお席を」とおっしゃってくださるお客様に対し、いかに満足してお帰りいただけるか、心を砕く、という一言に尽きます。それは、時に応じた座敷のしつらえを考え、お好みに添ったお食事をご用意することはもちろん、「舞」をご覧いただくことも大切にしております。 お客様のご希望に添えるよう芸妓さん、舞妓さんの段取りをし、彼女たちが芸を誇りとし、お客様とご一緒し、上手にもてなしてくれるようにはからうことが、お茶屋の仕事だと思っております。
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