お家元の好みものを作らせていただく職人は、お家元が考えておられることをどこまで汲み取るかが重要です。即中斎宗匠、而妙斎宗匠のもとに出仕して、本当に長い間お仕事をさせていただきますと、その積み重ねでお家元の意図を汲み取る加減が、何とはなしに分かるようになってまいります。阿吽の呼吸といいますか、暗黙の了解といいますか、具体的に言葉にされない微妙なところが、自然に分かるようになってきます。それは、毎月朔日の職家の日に、お家元にご挨拶をさせていただくのを始め、宗匠のお近くでお話をお伺いしたり、何度となく仕服や服紗のデザインをすり合わせたりすることによって身に備わってくる感覚で、それを踏まえた上でお好みものとしての形ができ上がるものなのです。
ですから、半四郎はまだ若い当主ですが、猶有斎宗匠のもとでご意向を汲みながら、年月を重ねることで、お好みものができてくるのだなあと思います。
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