十備会には長い歴史があります。近年は表千家北山会館を会場としてお借りしていますが、古くは東京日本橋の白木屋で開催されたこともあると聞いております。戦後、大徳寺や平安神宮でも行われてきました。昭和55年には、而妙斎宗匠のご襲名記念の十備会展を表千家の旧事務所の2階で行いましたのも、懐かしい思い出です。
十備会は新作を発表する場ですが、新しいものといっても、お茶のなかで使うものは限られますので、そうそう変わったものはできません。ただ、故人のお形見をお道具にしたい、お茶事に使いたいというご要望をいただき、作ることもあります。以前の十備会では、即中斎宗匠のご使用されていた帯をといて、2本の帯をまん中で継いで服紗にいたしましたが、文様を取り合わすのに苦労いたしました。これに限らず、さまざまな思いに応えて形にするのも職人の名利と思い、知恵をしぼっております。
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