昭和55年頃、私は父とともに不審菴の屋根の修復工事に携わらせていただきました。 即中斎宗匠がお亡くなりになり、而妙斎宗匠がご襲名され、披露の茶事をひらかれる頃だったと思います。
屋根をはがしてみると、以前の修復作業で鉄骨が入っていたり、歪みが出ていたりと、ひどい傷みようでした。しかし、私の手でいったん屋根をはがして内部をあらわにした以上、どれほどひどい状態であっても、「これは修復不可能です」と放棄するわけにはゆきません。今までも修復を重ねてきた茶室なのですから、必ず方法があるはずです。どのようにするか悩んだ末、梁(はり)や貫(ぬき)に手を入れ、必要のない補修材は取りはずし、無理な補修で歪んだ箇所は本来の寸法に戻し、時間はかかりましたが無事に修復を終えました。 茶室は、今現在の者が修復できたらそれで良いのではなく、何十年か先、建物が傷んだときに修復のあとを見れば、以前にどのような方法で行ったのかがわかり、同じような修復ができるように注意をはらって仕事をすることが大切なのです。
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