長年、お家元に勤めさせていただいたなかでことに印象に残っているのは、昭和44年に平安神宮で行われた而妙斎宗匠のご結婚披露茶会です。このとき、残月亭の床と点前座がついた組立式の座敷が新調されました。
この茶室はその後、昭和56年而妙斎宗匠ご襲名祝賀茶会で大徳寺本坊に、さらには平成12年猶有斎宗匠ご結婚披露茶会で再び平安神宮にお目見えしました。この3度だけお使いになられました。
これは平安神宮に保管されているものですが、3度目のとき、座敷を組み立ててみると、どういうわけか天井がつかえて台座にうまく据えられません。以前にも組み立てて使っていた座敷でしたから「そんなはずはない」と慌ててお尋ねすると、この日のために会場の絨毯(じゅうたん)を新調したとのこと。結果、その厚みで高さが変わり、台の上に組立式の座敷が入らなくなったのです。何とか手を入れて納めましたが、冷や汗をかきました。 |