|
 |
|

父から、「時間があれば庭先を見てまわれ」といわれ、時間のあるかぎりかならずお家元に伺い、茶室や露地に傷んだところがないか見てまわりました。お家元には私にまで親身によくしていただきましたので、なにかあれば、お家元をわが家のことのように思い、休むのを惜しんで仕事をさせていただくこともありました。お家元の作事は、一般の町屋では施工しない仕事がたくさんあり、年を重ねても勉強になることが多くあります。
随分昔の話ですが、一日の仕事が終わった頃、即中斎宗匠が、まだ小さな猶有斎宗匠を抱っこされて、よく庭先を歩かれているのにお目にかかることがありました。庭先まわりに傷んだところがあれば、「直しといて」とおっしゃっていました。 今思えば、宗匠はお庭をまわり、茶室や露地の状態を常に心がけておられたのだと、思い当たります。
その猶有斎宗匠が今、ご自身のご襲名披露茶事をひらかれ、都度都度、露地を見てまわられておられるご様子を伺いますと感慨深いものがあります。 私はもう80歳を過ぎて、出仕を控えさせていただきましたが、作事の仕事は傷んでから直すのが仕事やない、傷まんように日々目をかけるのが仕事やと思います。これからもお家元の茶室や露地が何もかわることがないように、と願っております。
|
| |
|
|