茶室の修復は、建築当初と変わりがないような自然な仕上がりにするため、修繕箇所は目立たないように、もとの材料と同じものを探さなければなりません。昔は、ありきたりの材料で茶室を建てたものでしたが、今ではその材料が高級品になっていたり、金具や釘類などの鉄金物にも今では作られなくなっているものがあり、特別に注文して作ってもらうこともあります。 平成2年の利休400年忌をひかえてのことだったでしょうか。祖堂(千利休居士を祀る点雪堂)の庇が下がっていたため、庇から大屋根の垂木にいたるまで修繕されることとなりました。 この折は、屋根の茅(こけら)の葺替えのご用命もありました。また、カラスが屋根に巣を作ろうとして茅を見るかげもなく痛めることもあります。 祖堂は重要文化財ですので、京都市の担当方の立会いがあり、文化庁の認可も必要です。私の役割は本来の姿に戻すことです。その一心でつとめさせていただきました。
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