前述の通り、この席で大きな特徴は茶道口にある。ここでは茶を点てる点前畳の前方に、茶道口が設けられている。
そのため亭主は置き付けてある水指の横を通って点前座に入り、くるっと九十度向きを変えて座る必要がある。
当然茶碗を置き合わせると通れなくなるので、建水を予め茶道口近くに置き、手を伸ばして取り込む必要がある。その上、茶道口を閉めなければならないので、引戸では扱いにくい。そこで考えられたのが太鼓襖を「釣襖にしても侘て面白」という発想である。蝶番(ちょうつがい)を付けて、開き戸にしたのである。
釣戸と引戸と両方あったと伝えられているが、現在は釣襖で、扉は自然に閉まるような調整がなされている。実際の点前では閉まってこないよう建水を置いて襖を止め、点前が始まって建水を取り込むと、自然に扉が閉まり、亭主は中から鍵を掛けるのである。
なんと面白い動きであることか。
不審菴でこの点前をなさるのは、お家元だけである。
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