茶が最初に中国から日本にもたらされたのは8世紀と考えられています。当時、日本は遣唐使を派遣して、唐の文化を積極的に受け入れていました。茶もまた、唐の最新の文化として日本に持ち帰られたのでしょう。 確かな日本の正史に茶の記事がはじめて登場するのは、9世紀の初頭、嵯峨天皇の時代です。『日本後紀』の弘仁6年(815)4月22日の条に、嵯峨天皇が琵琶湖西岸の韓(唐)崎へ行幸した帰途、大僧都永忠より茶を献じられたと記されています。 以後、茶は漢詩文学の世界にしばしば登場するようになります。しかし、現実に喫茶の習慣が定着していたということではなく、茶は詩のなかの風流の世界であったようです。従って、中国文化へのあこがれが次第に薄れてゆくなかで、茶に対する思いも次第に消えていきました。遣唐使が廃止されて国風文化の時代が到来する10世紀以降、茶は「季御読経」という宮中の特殊儀礼などに伝承されるにとどまり、茶の歴史は中断に近い状態になったと考えられます。
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