都市が発達して家が建てこんでくると、庭をつくるようになります。庭はいわば大自然の縮図であります。平安時代の貴族は寝殿造りという住宅様式をつくりあげました。 寝殿の前には大きな池を掘り、建物の間には流れがめぐり、清らかな水が池に注いで、野原がつくられ草木が植えられ、四季折々の眺めや風情を楽しむことができました。虫を放ってその声に耳を傾け、邸内で秋の嵯峨野の情緒を楽しんだりしたのでした。 寝殿造りは、建物と庭とが一体となった生活空間でした。それは日本住宅の伝統となって、桂離宮のように 「庭屋一如」の名作が数多く生まれました。それは自然と一緒でなくては暮せないという日本人の心情のあらわれでした。密集した都市の町家のなかにも奥庭や坪庭をこしらえ、青空の見える宇宙をつくって、自然界とのつながりを絶とうとはしなかったのです。こうした日本人の暮しは永遠の理想なのです。
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