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絵画や彫刻に代表されるいわゆる美術の展示といえば、全国各地のおびただしい展示施設を通じて、美術愛好家・研究家のもとめに応じているのがみられます。一般の美術品というとき、これらの品はこれを見る人の「鑑賞」に応ずるものです。それに対して、何らかの「実用」に応ずるものであれば、工芸又は工芸品としての名を負うこととなります。「茶の道具」というのは単なる鑑賞の対象ではなく、「実用に供される器物」です。茶の美術や工芸、いわゆる「茶の道具」というのは、愛好者が茶を点てて飲むための、「用」のつとめを果すものであり、一般の美術は「鑑賞」に、茶の道具は「用」に応えるものといえましょう。
例をひけば、茶室の
床の間にかけられる掛物はその茶室の主人が催す茶会の主旨を明示するもので、掛物が示す主題に添って、花入をはじめ、茶器や茶碗や茶杓も取りあつめられ、一会の茶会の主旨が豊かに客に伝えられることとなります。掛物においても、その絵や文字の独自の優れた性質をもとめるというより、他の道具との関連を豊かに引き出す「意味」を如何ほど備えているかが問題とされます。鑑賞に終らずに、用を伴う美術が「茶の道具」ということが出来ます。

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Japanese Tea Culture

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