谷崎潤一郎の著作『陰翳礼賛(いんえいらいさん)
』に「美と云うものは常に生活の実際から発達する物で……いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがて美の目的に添うよう陰翳を利用するに至った」と、日本の座敷の美しさは、このほの暗さに由来すると述べている。
まさに茶席は日本的な美の原点といえる。
この明るさを調節する手立てがいくつかある。その一つが簾である。正式な茶事であれば、初座の席は陰陽の「陰」であり、室内を暗くして客を待つ。そのため連子窓や下地窓に簾を掛けて室内を暗くしておく。
客はその席に躙(にじ)り込み、露地を渡ってきた明るさから暗い席に入ることで全く世界が変わることを実感できるのである。いよいよ別天地に身をおくことになる。
そこにもう一つ明かりを調節する手段がある。突上窓である。屋根の勾配を利用して外に向かって開きを付け、細い竹の棒で突き上げるのである。この竹の棒の長さで開く角度を変え、明かりの分量を調節する。単純だがとても効果がある。
天窓は普通の窓に比べて三倍ほど光がたくさん入ってくるそうだ。この不審菴の突上窓も二尺×一尺七寸ほどの大きさだが、南からの光が当たると、ちょうど炉の辺りが明るく見える。
じっくりと「陰翳礼賛」を楽しんでみよう。
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