【大意】
(茶の湯の道具の)由来に関する伝承について、世間で言われていることは違っている場合が多い。
茶人の間でよく知られている道具には、その伝来や銘の由来についてさまざまな伝承があります。この江岑のことばは、利休の好みの道具としてできた阿弥陀堂釜の銘についての話です。江岑は次のように書きとめています。大意を記してみましょう。
「阿弥陀堂釜は、有馬の阿弥陀堂の坊主が大きな釜を望み、利休の子や孫に読み書きを教えていた坊主を介して利休に頼んだところ、利休は釜の紙形を切り、釜師の与次郎に釜をつくるよう命じた。
さて、与次郎が釜をつくって利休のもとに持参すると、たいへん見事にできていたので、利休はその釜を自分のものにして茶の湯をした。すると、大名衆の間でその釜の写しをつくることが流行った。阿弥陀堂の坊主が利休に頼んでできた釜なので、利休は阿弥陀堂と名付けたのである。」〔以上、翻刻1の部分の大意〕