『逢源斎書』は『江岑夏書』の清書本と考えられています。『江岑夏書』は日付を入れた日記風に書かれていて、奥書に「宗巴一覧の為に書き申し候 逢源斎宗左(花押)」とあります。
宗巴(そうは)は江岑宗左を継承した表千家五代家元の
随流斎宗佐(ずいりゅうさいそうさ)です。江岑の妹くれ(元伯宗旦の娘)と久田家二代宗利の三男に生まれました。宗巴の兄は
久田家三代の宗全です。江岑はなかなか後嗣の男子に恵まれなかったため、宗巴は幼少の頃に叔父である江岑の養子にむかえられたのです。
江岑が『江岑夏書』をはじめ多くの茶書をのこした目的は、千家に伝わる初祖利休や茶の湯に関する貴重な伝承をのちの家元後嗣に確かな形で伝えるためでした。それは「宗巴一覧之為ニ書申候」ということばのなかによくあらわれています。